大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

最高裁判所第二小法廷 昭和32年(あ)2418号 決定

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人遠藤徳雄の上告趣意について。

所論は、事実誤認、単なる法令違反の主張を出でないもので、刑訴四〇五条の上告理由に当らない。しかも、第一審判決の認定及び原判決の説示によれば、判示日時窃盗本犯である米兵らが横須賀市田浦所在の米軍倉庫から窃取した賍物を貨物自動車に積載して、売却するのに都合のよい東京都内に運搬するにあたり、被告人は賍物であることの情を知りながら、米兵らの依頼を受けて同人らに協力し共同して横須賀市追浜本町一丁目一三番地附近より東京都台東区下金杉町五六番地先まで運搬したというのであるから、被告人の右所為は賍物運搬の罪を構成することもとよりである。右窃盗本犯らにおいて、窃盗罪のほかに賍物運搬罪をもって問擬せられないからといって、これがため被告人の賍物運搬の罪の成立に消長をきたすものとはいえない(昭和二八年(あ)第三三八二号同三〇年七月一二日第三小法廷判決、集九巻九号一八六六頁参照)。それゆえ、原判決には所論の違法は存在しない。また記載を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。

よって同四一四条、三八六条一項三号により裁判官全員一致の意見で主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 池田 克 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例